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実質賃金の低下―令和7年2月・毎月勤労統計から読み解く労働環境

  • 執筆者の写真: 仲宗根 隼人
    仲宗根 隼人
  • 4月8日
  • 読了時間: 2分

 

 厚生労働省が発表した「毎月勤労統計調査 令和7年2月分」によると、働く人々の給与をめぐる厳しい状況が続いていることが改めて浮き彫りになりました。特に注目すべきは、実質賃金が前年同月比で▲1.3%と、23か月連続でマイナスとなっている点です。


名目賃金は上昇しているのに…

 名目賃金(現金給与総額)は前年同月比で1.8%増の280,373円となっており、表面的には「賃金が上がっている」ように見えます。しかし、同時期の物価上昇を加味した実質賃金は引き続きマイナス。つまり、手取りが増えたように見えても、その分だけ物価が上がっており、「実際に使えるお金」はむしろ減っているのです。

 この現象は、企業がある程度の賃上げを行っている一方で、物価上昇のスピードがそれを上回っていることを示しています。とくに、食料品や日用品、エネルギー価格の上昇は家計に直撃しており、生活実感として「給料が増えても楽にならない」という声が多くなるのも頷けます。


業種別・雇用形態別でみると…

 一般労働者の所定内給与は前年同月比1.5%増となった一方で、パートタイム労働者の所定内給与は2.2%増と、やや高い伸び率を記録しました。これは人手不足を背景に、非正規雇用の待遇改善が一部進んでいることの表れと見られます。ただし、依然として月間給与の絶対額には大きな差があり、平均で正社員が約38万円、パートタイムは約10万円と、雇用形態による格差は大きく残っています。

また、産業別では製造業や宿泊業、飲食サービス業で賃金上昇が目立つ一方、医療・福祉分野では伸び悩みが続いています。コロナ禍以降、慢性的な人手不足と厳しい労働環境が続く医療・介護現場の待遇改善が進んでいない現状は、今後の社会課題としても注目されます。


 賃金と物価のバランスをどう取るか?

政府や経済団体は「持続的な賃上げ」を強く呼びかけていますが、企業側としては生産性の向上や価格転嫁ができなければ、十分な賃上げは難しいのが現実です。特に中小企業では、「最低賃金は上がっても売上は上がらない」「人件費増に耐えられない」という声も根強く、実効性のある支援策が不可欠です。

 一方で、労働者としても、「実質賃金」に注目する視点がますます重要になっています。表面的な給与額だけでなく、物価変動や購買力を踏まえた家計の見直しや、必要に応じた副業・転職など、個々人の対応力も問われる時代になっていると言えます。



 
 

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