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退職代行サービスへの対応で企業が留意すべきこと

  • 執筆者の写真: 仲宗根 隼人
    仲宗根 隼人
  • 4月22日
  • 読了時間: 4分
退職代行サービスへの対応で企業が留意すべきこと

 退職代行サービスの利用が増加しています。上司や人事担当者は、退職という重要事項は、直接本人から連絡が欲しいと考える方も多いでしょう。しかし、様々な理由で直接連絡をしたくない、又はできない労働者がいることも事実です。新年度や連休明けに、何かと話題に上がりやすい退職代行。企業としては適切な対応が求められます。以下に、企業が留意すべき主要なポイントをまとめました。​


1. 退職代行サービスとは

 退職代行サービスとは、労働者が会社に対して直接「退職の意思」を伝えることが心理的に困難な場合に、第三者(弁護士、労働組合、民間業者など)が代理・代行して企業へ退職の意思を伝えるサービスです。近年では新卒・若年層を中心に一定のニーズがあります。

 労働者が第三者を通じて退職の意思を伝えた場合でも、「本人の意思に基づくものである」ことが明確であれば、法律上は退職の意思表示として有効とされます(民法第93条、627条など)。 つまり、代理人が企業に対して「○○さんは退職したいと考えており、本日をもって退職の意思を表明します」と伝えた場合、法的には退職申出がなされたと扱われます。


2. 退職代行サービスの種類と法的性質

 退職代行サービスには大きく以下の3種類があり、それぞれ法的な許容範囲が異なります。

(1)弁護士が運営する退職代行(法律事務所)

【法的性質】:弁護士法に基づく代理権を有する

【できること】:企業との退職交渉(退職時期、有給取得、未払い賃金請求など)/損害賠償請求対応

【信頼性】:最も法的に安全で、訴訟リスクがある場合にも対応可能


(2)労働組合が運営する退職代行(ユニオン型)

【法的性質】:労働組合法に基づき「団体交渉権」を有する

【できること】:雇用者に対する団体交渉(例:有給取得、退職日の調整など)

【注意点】:対象となる退職者を「組合員」として取り扱うことが前提


(3)一般企業が運営する退職代行(民間業者型)

【法的性質】:代理権・交渉権を持たないため、連絡の「伝達」のみにとどまる

【できること】:退職の意思の伝達、書類送付サポート等

【違法の可能性】:雇用条件の交渉や賃金未払の請求などを行うと非弁行為(弁護士法第72条)に該当する可能性がある


3. 退職代行業者の資格と代理権の確認

 以上を踏まえて、退職代行業者が弁護士資格を有しているか、または労働組合であるかを確認することが重要です。​弁護士や労働組合以外の業者が退職条件の交渉を行うことは、弁護士法第72条に抵触する「非弁行為」に該当し、違法となる可能性があります。​そのため、何らかの交渉について応じる必要はありません。本人からの連絡や書類を受領するのみにとどめます。​業者の資格や代理権を確認し、適切な対応を行いましょう。 


4.雇用形態の確認と退職日の設定、有給休暇の対応

 従業員の雇用形態(無期雇用か有期雇用か)を確認し、適切な退職日の設定を行います。​無期雇用の場合、民法第627条により、退職の申し出から2週間後に雇用契約が終了します。​有期雇用の場合でも、やむを得ない事由(病気、介護、ハラスメントなど)がある場合は、契約期間中でも退職が認められることがあります。 ​

 退職までの期間に有給休暇の取得を申し出られた場合、労働基準法第39条に基づき、原則としてこれを認める必要があります。​退職代行を利用している場合でも、有給休暇の取得は労働者の権利であり、これを拒否することはできません。 


5. 退職手続きと貸与品・私物の対応

 退職届の提出、貸与品(パソコン、スマートフォン、制服など)の返却、私物の返還など、退職に伴う手続きを適切に行います。​本人が出社困難な場合は、退職代行業者を通じて、または宅配便などを利用して対応することが望ましいです。 


6. 懲戒処分や不利益処分等は慎重に

 退職代行サービスの利用を理由に、従業員を懲戒処分にしたり、退職金等を一方的に不支給とする処分をすることは、法的に問題となる可能性があります。​ただし、無断欠勤や業務妨害など、実際に企業に損害が発生した場合は、個別の状況に応じて対応を検討する必要があります。 ​感情的にならず、冷静に勤怠状況や事実を整理し、就業規則や雇用契約に基づいて適切に処理をすすめましょう。





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