今年の衆議院議員選挙において、野党の国民民主党が年収103万円の壁の見直しを訴え議席を大きく伸ばしたことから、この問題が注目を集めています。年収が103万円を超えると所得税が発生するため、税の壁とも言われます。
パートタイマーやアルバイトの方がよく耳にする年収の壁問題ですが、税に関するラインよりも、社会保険加入の基準を気にされる短時間労働者は多いのではないでしょうか。
この基準は事業所の規模によって異なり、「106万円の壁」と「130万円の壁」が存在します。
106万円の壁とは?
「106万円の壁」とは、特定の条件を満たした場合に、年収106万円を超えると社会保険(健康保険と厚生年金)への加入が義務付けられるラインのことです。この制度は、2016年に法改正が行われ、現在以下の条件を全て満たす場合に適用されます。
①勤務先の従業員数51人以上の企業(特定適用事業所)であること
②週の所定労働時間が20時間以上であること
③月額賃金が88,000円以上(年収106万円相当)であること
④1年以上の勤務見込みがあること
⑤学生でないこと
これらの条件を満たした場合、年収が106万円を超えると健康保険と厚生年金への加入が義務となり、保険料を負担する必要があります。
130万円の壁とは?
一方、「130万円の壁」は、主に従業員数が少ない企業に適用されるラインです。この壁は以下のように適用されます。
①勤務先が従業員数(厚生年金保険の被保険者数)が50人以下の企業であること
②年収が130万円を超えること
2024年10月の法改正により適用基準が変更され、従業員数が100人以下から50人以下の企業に縮小されました。
年収130万円を超えるとどうなるの?
配偶者の社会保険の扶養から外れます。
自身で健康保険と国民年金に加入し、保険料を全額自己負担する必要があります。
特に、健康保険については配偶者の扶養範囲内で働くことを希望する方にとって、この壁の存在が重要です。
なお、勤務先が社会保険の適用事業所であって、週の所定労働時間がフルタイム社員の4分の3以上働く場合は、勤務先で社会保険に加入する必要があります。
106万円と130万円の壁の違い
壁の名称 | 適用条件 | 保険加入の影響 |
106万円の壁 | 従業員数51人以上の企業 | 健康保険・厚生年金の加入義務発生 |
130万円の壁 | 従業員数50人以下の企業 | 配偶者の扶養から外れ、自己負担で社会保険加入 |
社会保険加入のメリットとデメリット
メリット
健康保険では、高額療養費制度や出産手当金、傷病手当金が利用可能。
厚生年金では、将来受け取る年金額が増加。
事業主が保険料の半分を負担するため、個人負担は軽減される。
デメリット
手取り収入が減少(保険料負担増加)。
収入調整を考える必要がある場合も。
最後に
社会保険の106万円の壁と130万円の壁について、沖縄県那覇市の社会保険労務士、仲宗根隼人が解説しました。年収の壁問題は働き控えが起こる要因となっており、大きな社会的な課題となっています。今後見直しや法改正が進んでいく分野です。労務管理は、アクティア総合事務所にお気軽にご相談ください。