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執筆者の写真仲宗根 隼人

労働憲章

更新日:7月31日

 

労働憲章

 労働基準法には、日本国憲法の諸原理を具現化するための定めがあります。

例えば、憲法が定める「生存権」「法の下の平等」「参政権」は、労働基準法において、それぞれ「労働条件の原則」「平等取り扱いの原則」「公民権行使の保障」として定められています。また封建的な労働悪慣行を一掃するためのものとして、強制労働の禁止、中間搾取の排除が定められています。


 労働条件については、労基法第一条に定められます。

①労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない

②労働基準法で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者はこの基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない


 「人たるに値する生活」とは、標準家族の生活も含めることとされています。「標準家族」とは、例えば父母や祖母、兄弟姉妹などの範囲で線引きがされているものではなく、「その時その社会の一般通年により理解されるべきものである」と通達で示されています。(昭23.11.27 基発401号)


 第2項では、労働条件の低下を禁じています。例えば、もともと時給1,000円の人を、「この地方の最低賃金は900円だから、来月から900円にします」といった労働条件の不利益な変更はできないということです。但し、賃金の引き下げなど、労働条件を一切低下できないという強硬的な定めではなく、「社会経済情勢の変動等、他に決定的な理由がある場合には本条に抵触するものでない」との通達があります。(昭63.3.14基発150号)例えば、近時の新型コロナウィルスのように、感染拡大で社会経済活動が停止し、やむを得ず賃金を引き下げざるを得ないような場合には、この基準に抵触するものではないということです。


「平等取り扱いの原則」については、労働基準法第3条が定めます。

使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。


 社会的身分とは、生来的な地位をいいます。臨時職と常勤職などの職制上の地位は含みません。労働条件とは、労働契約関係における一切の待遇をいいますが、「雇入れ」に関する

ことは含みません。例えば、ある思想や活動をしていることを理由に、会社が就職希望者の雇入れを拒むことは、この基準に抵触しないということです。差別的取り扱いについては、不利にあつかうことだけでなく、有利に扱うことも差別待遇に該当します。


「公民権行使の保障」は、労働者が労働時間中に、選挙権の行使や公の職務を執行することを権利として認めるものです。使用者は、労働者がこの権利の行使を請求した場合には、労働時間中であっても、これを拒むことができません。但し、請求された時刻を変更することは認められます。例えば飲食業などで、従業員が選挙に投票に行きたいと希望したとしても、お客様が集中するお昼時間帯は避けるように指示することは認められるということです。なお、請求した公民権行使の時間については、有給とすることは義務ではありませんので、中抜けしたその時間は無給としても違法ではありません。


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 労働憲章について、沖縄県那覇市の社会保険労務士、仲宗根隼人が解説しました。労務管理に関するご相談は、アクティア総合事務所にお気軽にお問い合わせください。

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