労働時間の管理を弾力化する変形労働時間制のうち、最も長い期間を認めるのが1年単位の変形労働時間制です。観光関係やレジャー事業など、季節等により業務の繁閑に差がある事業が、業務状況に合わせて労働時間を設定することによって時間外労働をおさえ、全体として労働時間を短縮することを目的としています。名称は1年単位ですが、1年以内であれば3か月や6か月を単位とすることも認められています。
導入するための要件は以下のとおりです。
・労使協定で、以下の5項目について締結し、所轄労働基準監督署へ届け出ること
①対象労働者の範囲
②対象期間(1か月を超え1年以内の期間)
③特定期間
④労働日及び労働日ごとの労働時間
⑤労使協定の有効期間
1か月単位の変形労働時間制は就業規則に定めることによって導入することができますが、1年単位の変形労働時間制は、就業規則のみにより導入することはできず、労使協定の締結と届出が必須です。
①の対象労働者には、途中採用者や退職者も含まれます。
②の対象期間は、その期間を平均して1週間当たりの労働時間が40時間を超えない範囲内において労働させる期間をいいます。労使協定で起算日を明らかにする必要があります。
③特定期間とは、対象期間において特に業務が繁忙な期間をいいます。
④労働日及び労働日ごとの労働時間は、対象期間を平均して1週間の労働時間が40時間を超えないよう、各日、各週の所定労働時間を定めることが必要です。具体的には、次のように取り決めを行います。(※対象期間を1か月以上ごとに区分することとした場合)
(1)対象期間の最初の期間のみ、労働日及び労働日ごとの労働時間を定めること
→初めの1か月は、日々出退勤時刻などのシフトを全て組むイメージです。
(2)次期以降の区分期間は、各期間における労働日数及び総労働時間を定めること
→2か月目以降は、起算日時点で日々のシフトまで組む必要はありませんが、各月の出
勤日数と合計勤務時間を決めておきます。
→各区分期間の初日の少なくとも30日前に、労働者代表の同意を得て、日々のシフトを
組むイメージです。
1年単位の変形労働時間制は、特に繁忙となる季節に対応するため、ある時期に集中して長時間のシフトを組むことができます。但し、無制限な長時間労働とならないよう、対象期間には労働日数と労働時間の限度が定められています。
①労働日数の限度:1年あたり280日(対象期間が3か月を超える場合)
②労働時間の限度:1日10時間、1週間52時間(対象期間の長短を問わない)
※週48時間を超えることができるのは連続3週以内
また、連続して労働させることができる日数にも制限があり、最長6日までとなっています。但し、「特定期間」においては、1週間に1日の休日が確保できる日数とされ、実質的には12日になります。法定休日の例外を定める変形休日制では、連続労働日数の制限はありませんが、1年単位の変形労働時間制では法定休日の制限がかかりますので、この点も注意を要します。
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1年単位の変形労働時間制には、多くの制限があります。沖縄県那覇市の社会保険労務士、仲宗根隼人が解説しました。変形労働時間制の導入について、アクティア総合事務所にお気軽にご相談ください。