top of page
執筆者の写真仲宗根 隼人

仮眠時間が労働時間に?判例が示す休憩と労働の境界線とは

仮眠時間が労働時間に?判例が示す休憩と労働の境界線とは

 職種によって、勤務時間の途中に仮眠をとることがあります。仮眠時間は、休憩時間として賃金を支払う必要がない場合と、支払い義務が生じる場合があります。仮眠時間は、その定義や長さになどについて労働基準法には定めがありません。仮眠時間に関する最高裁判決があり、この判例が労務管理上の重要な参考になっています。


1. 大星ビル管理事件

 この事件は、ビル管理業務に従事する従業員が、勤務中に与えられた仮眠時間が労働時間に該当するかを争った裁判です。最高裁判所は、労働基準法上の「労働時間」に該当するかどうかの判断基準を示しました。この判決は、休憩時間や仮眠時間に関するルールの理解を深めるうえで重要な事例とされています。


2. 問題となった仮眠時間の内容

 従業員たちは24時間勤務の中で、連続7~9時間の仮眠時間が与えられていました。この時間中、仮眠を取ることは許されていましたが、次のような制約がありました。

①警報対応義務:警報が鳴れば対応する必要がある。

②外出禁止:ビルを離れることはできない。

③飲酒禁止:勤務中としての規律を守る必要がある。

つまり、完全に自由な時間ではなく、業務に即応する準備が求められていました。


3. 最高裁の判断基準

 最高裁は、仮眠時間が労働基準法上の「労働時間」に該当するかを判断する際に、以下の基準を示しました。

①拘束性の有無:従業員が会社の指揮命令下に置かれているか。

②自由度の程度:従業員がその時間をどれだけ自由に使えるか。

③即応義務の内容:緊急対応を求められる頻度や性質。

 判決では、この仮眠時間は「労働時間」に該当すると判断されました。理由は、仮眠中であってもビル内に拘束され、緊急対応の義務があったためです。


4. 実務への影響

 この判決は、労働時間と休憩時間の区別において、次のような指針を与えています。

①休憩時間の定義:従業員が完全に自由に使える時間であることが必要。業務対応の準備が求められる場合、それは休憩時間ではなく労働時間とみなされる可能性が高い。

②仮眠時間の扱い:業務対応の義務や制約がある場合、仮眠時間も労働時間と判断されることがある。


5. 企業が注意すべきポイント

 この判決を踏まえ、企業は以下を確認する必要があります。

①休憩時間の確保:従業員が完全に自由に使える休憩時間を設けること。

②仮眠時間の取り扱い:仮眠中に対応義務がある場合は、労働時間として取り扱い、適切な賃金を支払うこと。

③労働条件の明確化:就業規則や労働契約書で、休憩時間や仮眠時間の取り扱いを明示すること。


6. 判決がもたらした影響 

 大星ビル管理事件の判決は、企業と従業員双方に「拘束性」の重要性を再認識させました。従業員が自由に使えない時間は、労働時間として扱われる可能性があるため、特に長時間勤務を課す企業は慎重な管理が求められます。この判決を契機に、働き方の見直しや労働環境の改善が進むことが期待されています。


まとめ

 「仮眠時間が労働時間に?判例が示す休憩と労働の境界線とは」について、沖縄県那覇市の社会保険労務士、仲宗根隼人が解説しました。休憩時間や仮眠時間の運用は、労働法の基本に立ち返りつつ、従業員の拘束性を慎重に検討することが必要です。労務管理は、アクティア総合事務所にお気軽にお問い合わせください。

bottom of page