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  • 執筆者の写真仲宗根 隼人

専門業務型裁量労働制とは

更新日:5月15日

専門業務型裁量労働制とは

 裁量労働制とは、専門性の高い業務や、使用者の具体的な指示のもとに労働しない就業形態など、特定の業務に従事する労働者に対して、実際の労働時間に関わらず、一定の時間労働したものとみなす制度です。2024年4月から対象業務が拡大された一方、対象労働者の健康福祉確保措置がより強く求められるようになりました。


専門業務型裁量労働制

 専門業務型裁量労働制は、専門的な知識や技術を活用する業務に従事する労働者が、その業務の性質上、労働時間の管理が難しい場合に適用されます。この制度では、労働者の実際の労働時間ではなく、あらかじめ使用者と労働者の間で定めた「みなし労働時間」を基に労働時間を評価します。これにより、労働者は自律的に仕事を進めることができます。


対象業務

 専門業務型裁量労働制の対象となる業務は、労働基準法で具体的に規定されています。主な対象業務は以下の通りです。


(1)新商品若しくは新技術の研究開発又は人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務

(2)情報処理システム(電子計算機を使用して行う情報処理を目的として複数の要素が組み合わされた体系であつてプログラムの設計の基本となるものをいう。(7)において同じ。)の分析又は設計の業務

(3)新聞若しくは出版の事業における記事の取材若しくは編集の業務又はテレビ・ラジオの放送番組の制作のための取材若しくは編集の業務

(4)衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務

(5)放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサー又はディレクターの業務

(6)コピーライター

(7)システムコンサルタント

(8)インテリアコーディネーター

(9)ゲーム用ソフトウェアの創作の業務

(10)証券アナリスト

(11)金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務

(12)学校教育法(昭和22年法律第26号)に規定する大学における教授研究の業務(主として研究に従事するものに限る。)

(13)公認会計士の業務

(14)弁護士の業務

(15)建築士(一級建築士、二級建築士及び木造建築士)の業務

(16)不動産鑑定士の業務

(17)弁理士の業務

(18)税理士の業務

(19)中小企業診断士の業務

(20)いわゆるM&Aアドバイザー

 

導入の手続き要件

 まず、使用者は労働者代表と労使協定を締結します。この協定には、以下の事項を定める必要があります。協定は労働基準監督署に届け出る必要があります。また、対象者労働者の同意を得る必要があります。


 (1)対象業務

 (2)業務遂行の手段や方法、時間配分等に関し労働者に具体的な指示をしないこと

 (3)労働時間としてみなす時間

 (4)労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉を確保するための措置の具体的内容

 (5)苦情の処理のため実施する措置の具体的内容

 (6)労働者本人の同意を得ること

 (7)労働者が同意をしなかった場合に不利益な取扱いをしないこと

 (8)同意の撤回の手続き

 (9)協定の有効期間

 (10)(4)及び(5)に関し労働者ごとに講じた措置の記録を協定の有効期間及びその期間満了後3年間保存すること


制度のメリット

 この制度では、次のようなメリットがあります。

 (1)労働者の自律性の向上:労働者は自分のペースで仕事を進めることができ、仕事の質や生産性の向上が期待できます。

 (2)柔軟な労働時間:労働時間の管理が緩やかになり、プライベートとのバランスが取りやすくなります。これにより労働者のモチベーションアップにつながります。

 (3)専門性の発揮:高度な専門知識や技能を持つ労働者が、使用者の指揮や日々の時間管理から実質的に解放され、その能力を最大限に発揮できます。


デメリット

 一方、次のようなデメリットも考えられます。

 (1)長時間労働のリスク:労働時間が自己管理になるため、長時間労働が常態化する可能性があります。

 (2)健康管理の課題:労働者が過度に働きすぎ、健康を損なうリスクがあります。

 (3)評価の困難さ:みなし労働時間による評価が実際の成果と一致しない場合、適切な評価が難しくなります。


制度導入の注意点

 裁量労働制は、長時間労働が常態化するリスクがあります。このため、労働者の健康・福祉確保措置が具体的に求められています。

 

【1:事業場の適用労働者全員を対象とする措置】

①終業から始業までの一定時間以上の休息時間の確保(勤務間インターバル)

②深夜業(22時~5時)の回数を1か月で一定回数以内とする

③労働時間が一定時間を超えた場合の制度適用解除

④連続した年次有給休暇の取得


【2:個々の労働者の状況に応じて講ずる措置】

⑤ 医師による面接指導

⑥ 代償休日・特別な休暇付与

⑦ 健康診断の実施

⑧ 心とからだの相談窓口の設置

⑨ 必要に応じた配置転換

⑩ 産業医等による助言・指導や保健指導


 上記の措置を全て実施することまでは求められていませんが、①から④又は⑤から⑩までの措置を、それぞれ1つずつ以上実施することが望ましいとされています。このうち、特に把握した対象労働者の勤務状況及びその健康状態を踏まえ、③を実施することが望ましいとされています。

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 専門業務型裁量労働制とは。沖縄県那覇市の社会保険労務士、仲宗根隼人が解説しました。裁量労働制に関するご相談は、アクティア総合事務所にお気軽にお問い合わせください。

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