沖縄労働局が、令和5年度における「個別労働紛争解決制度」の施行状況をまとめ、公表ました。これは、労働相談やトラブル解決の対応状況に関する情報で、企業の労務管理にも重要な影響を与えます。今回の概要と、企業が留意すべきポイントを解説します。
総合労働相談件数は微減
令和5年度の総合労働相談コーナーに寄せられた相談件数は9,764件で、前年度の10,113件と比較して約3.5%減少しました。しかし、労働基準法違反の疑いがある相談件数は2,787件で、前年より56.1%増加しています。法令違反の事案については、労働基準監督署をはじめとした所轄官庁による行政指導が行われています。
解雇に関する相談増加
民事上の個別労働紛争の相談件数では、特に「解雇」に関する相談が405件と前年度比で16.7%増加しており、助言・指導の申出でも最も多く扱われた項目の一つです。企業は解雇の際には法的手続きを遵守し、トラブルを避けるための十分な準備が必要です。
いじめ・嫌がらせ
労働紛争の中で、「いじめ・嫌がらせ」も重要な課題となっており、338件の相談がありました。これはパワーハラスメントなど職場環境の問題が、引き続き大きな課題であることを示しています。
企業が留意すべきポイント
就業規則や労働条件の整備
労働基準法違反が疑われる相談が増えていることから、就業規則や労働条件が法令に沿っているかの再確認が必要です。労働時間や賃金、休暇などに関する条件は、労働基準法に則り適切に定めることが求められます。また、見直しが必要な場合は、法的アドバイスを受けて速やかに対応することが望ましいです。
解雇手続きの適正化
解雇に関する相談が増加している背景には、解雇の適正な手続きを巡るトラブルが考えられます。解雇する際には、事前に警告や指導を行い、理由や手続きが合理的であることを明確にすることが大切です。不適切な解雇は、裁判所でも無効と判断されることが多く、経済的負担や企業イメージの損失につながるため、慎重な対応が求められます。
パワハラ・セクハラの防止措置
労働局の総合労働相談コーナーに寄せられる相談には「いじめ・嫌がらせ」も含まれています。特に、令和4年度からパワーハラスメントに関する相談が独自の集計対象となっており、ハラスメント対策が一層強化されています。企業は、就業規則にハラスメント防止規定を盛り込み、職場環境を整備することが求められます。
相談窓口の設置と対応策の明確化
労働局の相談窓口が増加しているように、企業も社内相談窓口を設けることが重要です。従業員が安心して相談できる環境を整備し、トラブルが発生した際の解決手段や相談窓口を明確に案内することで、トラブルの未然防止が期待できます。社員教育や労務担当者のスキルアップも効果的です。
早期解決を目指した労使間のコミュニケーション強化
紛争が起きた際には、労働局の「あっせん」制度なども活用して早期解決を図ることができます。企業内での問題解決が難しい場合でも、労働局のサポートを受けることで迅速な解決を目指すことが可能です。解決が長引くと企業側にも大きなコストがかかるため、労使間の積極的なコミュニケーションを図り、早期解決に努めることが肝要です
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沖縄県の「令和5年度個別労働紛争解決制度の施行状況」について、沖縄県那覇市の社会保険労務士、仲宗根隼人が解説しました。労使トラブルを防ぐ労務管理は、アクティア総合事務所にお気軽にご相談ください。