時間外労働・休日労働をさせた場合は、割増賃金を支払う義務があります。時間外労働は2割5分以上、休日労働は3割5分以上の割増率です。但し、1か月の時間外労働が60時間を超えた場合は、5割以上の割増率になります。
割増賃金を計算するには、1時間あたりの単価を算出する必要があります。時給の場合は特に悩むことはありませんが、日給や月給の場合は、その労働者の所定労働時間に基づいて時給に換算することになります。日給者は、その者の1日の所定時間で除することで時給換算します。
・月給者の平均所定労働時間
月給者の場合は少し注意が必要です。歴日数は28日から31日まであり、月によって所定労働時間が変動することになります。ですが、一般的に月給者に支払う基本給や各種手当などの固定的賃金は、月によって変動しません。従って、割増賃金を求めるためには、その者の1年間における1か月平均所定労働時間を求め、時給換算します。
例えば、土日が休日の場合、以下の計算により平均所定労働時間を求めます。
365 -(52(年間週数)×2(土日))=261(年間所定労働日数)
261÷12=21.75(月平均所定労働日数)
21.75×8(1日所定労働時間)= =174時間
・割増賃金の計算の基礎となる賃金
次に、割増賃金の計算の基礎に入れるべき賃金を整理します。月給者の場合、基本給の他に、資格手当、家族手当など各種手当が支払われていることがあります。原則として、毎月固定的に支払う賃金は計算の基礎に入れますが、以下の賃金は計算の基礎から除外されます。
①家族手当・通勤手当・別居手当・子女教育手当・住宅手当
②臨時に支払われた賃金
③1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
注意が必要な点として、家族手当は、扶養家族数に関係なく一律に一定額を支給している場合は、名称は家族手当としていても、実質的に家族手当とはみなされず割増賃金の計算に基礎に含まれます。また、住宅手当について、住宅に要する費用に応じて算定される手当をいいますので、住宅の形態ごとに一律に一定額を支給している場合は、割増賃金の計算の基礎に含まれます。
・年俸制の場合
年俸制での契約では、賞与について注意を要します。年俸制で毎月支払い部分と、賞与部分の金額があらかじめ確定している場合、賞与については上記②及び③の臨時の賃金や1か月を超えるごとの賃金に該当しません。従って、算定の基礎に入れる必要があり、年俸の総額を12で除して月額の賃金を算出することになります。高額の賞与を予め用意している場合には、時間外労働の単価が高額になります。
・月給30万円、土日のみ休日の場合
(例)総支給30万円
内訳:基本給260,000円、資格手当20,000円、通勤手当8,000円、家族手当12,000円
(計算式)
280,000(算定基礎賃金)÷174(月平均所定労働時間)=1,609円
割増賃金の計算の基礎と所定労働時間によって、単価に差額が生ずることになりますので、正確に区別する必要があります。
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時間外・休日労働の割増賃金について、沖縄県那覇市の社会保険労務士、仲宗根隼人が解説しました。労務管理は、アクティア総合事務所にお気軽にご相談ください。