top of page
  • 執筆者の写真隼人 仲宗根

労災保険法③ 労災認定基準

更新日:2023年11月27日

 労災の給付申請の実務において、仕事中の事故発生などその原因と結果の関係が明確な場合、保険給付が問題になることは多くはありません。指定様式に必要な情報を記入し、必要に応じて添付書類を提出すればスムーズに給付されます。しかし、因果関係が必ずしも明確でない場合には、労災か否かについて判断が分かれることがありえます。


 特に、脳血管疾患、心臓疾患については、発症と原因の因果関係の判断が難しくなることが多くあります。このため、脳・心臓疾患については、一定の認定基準が示されています。以下のケースで、業務による明らかな過重負荷を受けたことにより発症した脳・心臓疾患を発症した場合には、業務に起因する疾病として取り扱うこととされています。


 ①長期間の加重業務

  →発症前の長期間(発症前おおむね6か月間)にわたって、著しい疲労の蓄積をもたら 

   す特に過重な業務に就労したこと(発症前1ヵ月におおむね100時間又は2か月ないし

   6ヵ月にわたって、1ヵ月あたりおおむね80時間を超える時間外労働をした場合、業務

   と発症との関連性が強いと評価できる)


 ②短期間の加重業務

  →発症に近接した時期(発症前おおむね1週間)において、特に過重な業務に就労した

   こと


 ③異常な出来事

  →発症直前から前日までの間において、発生状態を時間的及び場所的に明確にしうる異

   常な出来事に遭遇したこと(極度の緊張、興奮、恐怖など人の生死に関わるような   

   重大事故や災害等)


 脳・心臓疾患は、一般的に生活習慣や遺伝等により発症することが多いとされていますが、仕事が特に過重で発症した者が、以上の3つのケースに当てはまる場合、労災と認定される可能性が高まります。

 特に、時間外労働の目安として示されている時間に留意する必要があります。100時間を超える時間外労働は、労災認定基準にかかります。状態的に80時間を超える時間外労働も同様です。一般的に、「過労死ライン」といわれるものです。この基準を無視(若しくは知らず)長時間労働を常態化させ、結果として労働者が脳・心臓疾患を発症してしまった場合、労災と認定される可能性が高くなるだけでなく、安全配慮義務違反や使用者責任が問われる場合には、労働者又は遺族から、使用者に対する損害賠償請求へとつながる可能性があります。

 事業主は、労災保険からの給付によって、労働基準法上の補償を免れることはできますが、民事上の訴訟リスクを理解しておかなければなりません。

最新記事

すべて表示

労災保険法⑦ 休業(補償)等給付 

労働者が業務上の事由による負傷や疾病の療養のため休業し、賃金を受けない場合、生活費を補うことを目的として、労災保険から「休業(補償)等給付」が支給されます。 休業した初日から支給されるものではなく、休業した最初の3日間については待期期間として支給されません。この3日間は、事業主が負担して休業補償を支払う必要があります。支給額は、1日あたり給付基礎日額の100分の60です。給付基礎日額とは、労働基準

労災保険法⑤ 通勤災害

労災保険では、業務上の傷病だけでなく、通勤に起因する負傷、疾病、傷害、死亡も保険給付の対象になります。通勤災害の定義は、「就業に関し住居と就業の場所との間の往復等を、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除く」とされています。負傷・障害・死亡は、通勤に伴う危険が具体化した場合に通勤災害に該当します。例えば、通勤中の交通事故により負傷したり、死亡したりした場合が該当します

労災保険法④ 精神障害の認定基準

長時間労働を原因として疾病を発症した場合について、「脳・心臓疾患」と「精神障害」の認定基準が別に定められています。 「脳・心臓疾患」の労災認定基準は、発症前1ヵ月に概ね100時間以上又は発症前2か月間ないし6ヵ月間にわたり1ヵ月あたり80時間を超える時間外労働があった場合、業務と発症との関連が強いと評価されます。 「精神障害」の認定基準は、さらに具体的な場面ごとに、時間外労働の基準が設けられていま

Commenti


bottom of page