労働基準法の一部には、罰則を伴う強行規定があります。強行規定とは、当事者間の合意の如何を問わずに適用される規定をいいます。労働基準法のうち、最も重い罰則が規定されているのは、「強制労働の禁止」です。これに違反した使用者は、1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金が科せられます。日本国憲法第18条は、「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰を除いては、その意に反する苦役に服させられない。」と定められています。労働基準法第5条は、憲法の要請を受けたものです。
使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によって、労働者の意思に反して労働を強制してはならない(法第5条)とされています。脅迫には、必ずしも積極的な言動によって示す必要はなく、暗示する程度でも足ります。また、事実上の労働関係が存在している場合であれば、この規定の違反になります。雇用契約書が締結されていないから、とか、社会保険や雇用保険に加入していないから、労働関係にないということは認められず、実態として労働関係があればこの規定の対象になります。
例えば、借金や強制貯蓄など、金銭的経済的事情を理由に本人の意思に反して労働させる場合などです。強い言葉で脅してはいないとしても、労働者の個人的事情や背景などを逆手にとって、暗に働かざるを得ないような発言をして精神的に追い込み、結果として本人の意思に反して労働させていた場合などには、強制労働に該当する可能性があるということです。
また、「労働者の意思に反して労働させる」とは、不当な手段によって労働者の意思を抑圧して労働を強要することを指します。即ち、労働者が現実に労働することを要しません。肉体的に実働させていないとしても、労働を強要した時点で労働基準法第5条の違反が成立します。
----------------------------------------------------------------------------------
労働者の人権擁護に関する規程について、沖縄県那覇市の社会保険労務士、仲宗根隼人が解説しました。労務管理に関するご相談は、アクティア総合事務所にお気軽にお問い合わせください。