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  • 執筆者の写真隼人 仲宗根

労働基準法の基礎知識① 適用事業と労働者

 労働基準法は、労働者の最低限の権利を保障します。例えば、労務の提供の対価として、最低賃金以上の賃金を支払うことを事業主に義務づけることで、労働者が最低限の生活水準を保つための収入を得ることができるようになっています。また、時間外労働の手当や休暇の取得など、労働者の労働条件を適切に保護します。労務管理の最低限の基礎知識として、労働基準法を学ぶことから始めましょう。


 まず、この法律が適用される事業についてです。「適用事業」といいます。事業の単位は、場所的観念と独立性により決まります。同じ場所にあるものは、原則として1個の事業とされます。例外的に、業務・労務管理が独立した部門は、独立した別の事業とされます。労働基準法は、事業の種類や規模を問わず、労働者を使用する全ての事業又は事務所において適用されます。


すなわち、誰が労働者に該当するのかということがまず重要になります。


 労働者の定義について、労働基準法は次のように定めます。

「職業の種類を問わず、事業または事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう」

外見上は事業で働いているように見えても、この定義に該当しない者には、労働基準法は適用されない、ということになります。


 判断基準としてまず挙げられるのは、「使用される者」であるかどうかです。使用されるとは、他人の指揮命令下において、労働力を提供することをいいます。具体的には、業務内容、遂行の方法、勤務場所や勤務時間等の拘束性により判断されます。


 法人の代表や役員、部長職のように、経営に関わる者は労働者ではありません。但し、役職が部長や工場長、店長など、名称では役職者のように見えても、業務執行権を持たない者は、労働者に該当します。


 また、労働者と同じような業務をしていても、フリーランスのように個別の業務を請負う契約の形で働いている場合は、労働者には該当しません。但し、形式上は請負契約をとっていても、場所的時間的な拘束性が強く、使用者の指揮命令系統のもとに労務を提供している場合には、労働者に該当します。


 労働者に該当しない場合、法定労働時間、割増賃金、最低賃金、年次有給休暇、労災保険や雇用保険など、労働者を保護するための各種の規程が全て適用されません。労働者に該当するか、しないかとの区別で、労働基準法の適否が分かれるのですから、影響は大きくなります。

 

 労働者性について労使に争いが生じた場合、この点が大きな問題になります。

例えば、店長職として労働者ではなく使用者であるとの雇用管理がなされ、割増賃金の支払いがされないまま、長時間労働が常態化していた場合などです。労働者に該当するか、しないかについて争いになった場合、最終的には個別具体的な事情により裁判所が判断することになりますが、仮に、この事案で労働者に該当するとの判断がなされた場合、使用者は過去に遡って割増賃金相当を支払う義務が生じます。長期間経過している場合には遅延損害金も加わります。訴訟ですから、弁護士費用も必要でしょう。事業主にとっては非常に大きな負担となってのしかかります。


 日常的に、労働者性の判断基準の基本を理解、遵守した雇用管理が事業を守ることに繋がります。

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