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  • 執筆者の写真隼人 仲宗根

労働基準法の基礎知識⑪ 賃金(3)



 労働基準法は、賃金の支払い方について5つの原則を定めています。


①通貨払の原則

 賃金は、通貨で支払わなければなりません。通貨の代わりに、例えば自社製品などを現物で支給することは原則としてできません。例外的に、労働協約が締結されている事業場では、現物払いが認められます。労働協約とは、労働組合と使用者との間で締結されるものです。労働協約に似たものに労使協定がありますが、労使協定では現物払いをすることはできません。従って、労働組合がない事業場では、賃金を現物で支払うことはできないのです。

支払う方法について、必ずしも現金を手渡しする義務はなく、労働者の同意があれば、口座振り込みが認められます。


②直接払の原則

 賃金は、労働者に直接支払わなければなりません。親権者などの法定代理人への支払い、委任を受けた任意代理人への支払い、賃金債権を譲渡した場合において譲受人に支払うことは、全て違法です。例外的に労働者以外への支払いが認められる例として、病気療養中に妻などの使者に取りに行かせること、行政官庁の差押え処分に従って行政官庁に納付すること、派遣先が派遣元からの賃金を手渡すことは、違法とはなりません。


③全額払の原則

 賃金は、その全額を支払わなければなりません。全額とは、履行期が到来している賃金債権の全額をいいます。例外的に、一部を控除して支払うことができるものとして、法令に別段の定めがあるもの(所得税の源泉控除、社会保険料の控除)は控除することができます。逆に、これら法定控除以外の項目で賃金から控除する必要がある場合には注意が必要です。

法定控除以外は一切控除できないものではなく、労使協定を締結することで控除することが可能です。

 なお、欠勤した場合に欠勤相当の賃金を控除することは問題ありませんが、欠勤相当の賃金は厳密に計算する必要があります。例えば、5分の遅刻に対して、一律15分や30分の単位で控除することは違法です。


④一定期日払の原則

 賃金は、一定の期日を定めて支払わなければなりません。例えば、「毎月20日支給」「毎月末日」のように、到来することが確実な日を指定して支給することは可能ですが、「毎月第4火曜日」などのように、支払い日が不確定な指定の仕方はできません。

 一定期日払の例外は、賞与や1ヵ月を超える期間の成績等によって支払われるものです。これらの賃金は、一定期日ごとに支払う必要はありません。


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