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  • 執筆者の写真隼人 仲宗根

労働基準法の基礎知識④ 労働契約に関する規制(1)

 私人間の契約は、自由に定めることができるというのが民法の原則です。当事者間で締結された契約に対して、国家はそれに干渉することはできず、それぞれの内容が尊重されなければなりません。「契約自由の原則」といいます。この考え方は、対等な立場である個人間の契約を前提としていますが、現実社会では必ずしも対等な関係で契約が行われているとは限りません。実質的平等を図るために契約自由の原則が修正され、当事者が合意した内容であっても効力が生じなかったり、解約が認められる制度が設けられています。

 

 労働契約がこれの典型例です。労働者を保護し、労使間で実質的な平等を図るために、労働基準法や最低賃金法などの法律によってさまざまな規制がなされています。


 労働契約の定義は、労働契約法という法律で定められています。「労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意すること」とされています。どのような労働条件で働き、いくらの賃金を支払うか労使が合意して定めることができます。

 いくらでも自由に決めることができるとなると、弱い立場に立たされやすい労働者にとっては、不利な条件であっても承諾せざるを得ないことがありえます。そこで、労働基準法は労働者の最低限の権利を保護するため、各種の規制を定めています。


 まず、法律違反の契約を無効とするものです。労働基準法で定める各種の規定に違反する労働契約は無効です。例えば、割増賃金を支払わないことや、有給休暇は発生しないなどの労働条件を定める労働契約は、たとえ労使が合意していたとしても無効です。労働基準法で定める強行的な規定は多数ありますから、よく調べた上で労働条件を決定する必要があります。労働基準法で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効となります。無効となった部分は、労働基準法で定める基準によることとされています。


 次に、契約期間の制限があります。長期間の身分拘束を防ぐため、契約期間には上限が定められています。原則として、労働契約は期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、3年(一定の労働契約については5年)を超える期間を締結することはできません。契約期間の上限が5年となる労働契約は、「高度専門的労働者」「満60歳以上の者」に係るものです。


 高度専門的労働者とは、専門的な知識、技術又は経験であって高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当するものをいいます。年収の基準として、1年の賃金額が1,075万円以上であることが必要です。


また、有期労働契約に関する制限もあります。期間の定めのある労働契約について、使用者は、契約を更新しないこととする場合には、少なくとも契約期間満了の30日前までに、その予告をしなければならないこととされています。この予告は、契約を3回以上更新し、又は雇入れから1年を超えて継続勤務している者に限られます。また、あらかじめ当該契約を更新しないことが明示されている契約も、予告は不要です。


 必要とされている解約の予告をせずに労働契約を解除する場合は、事業主都合の解雇に該当し、別のさまざまな規制が及びます。 

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