労働基準法では、多くの禁止規定があります。中には罰則付きで禁じられている事柄もあります。しかし、現実の労働関係では、全ての禁止事項を貫くと逆に労働者にとっても不利益になることがありえます。そこで、労働基準法で禁止されている行為を、適法に行うための手続きが規定されています。それが労使協定です。
労使協定を締結することで、法の規制が解除され、使用者は法違反によるペナルティを免れることができます。また、禁止されている行為を有効にする効力もあります。この「免罰的効力」「強行性の解除」が労使協定の大きな効果です。
労使協定は、その事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合にはその労働組合と使用者との間で、組合がない事業場の場合は、労働者の過半数を代表する者と使用者との間で、書面によって締結されます。口頭で合意しただけでは効力は生じません。労使協定の種類は、時間外労働に関するものや、賃金から法定控除以外の項目を控除するためのものなど、多くの種類があります。それぞれに必要な記載事項が定められています。以下は、全ての労使協定に共通する重要事項についてです。
労働者の過半数を代表する者について、以下の要件が定められています。
①監督又は管理の地位にあるものでないこと
②労使協定の締結等を行うものを選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の
方法による手続きにより選出されたものであって、使用者の意向に基づいて選出された
ものでないこと。(労働者の話し合い、持ち回り決議なども認められます)
要は、労働者代表の選出にあたっては労働者らの意思であること、民主的な手続きで選任されていることが求められています。使用者は、過半数代表者が法に規定する協定等に関する事務を円滑に遂行することができるよう必要な配慮を行わなければならないこととされています。
注意が必要な点として、管理監督者は労働者代表にはなれませんが、労働者の人数をカウントする際には、労働者の総数に含まれるという点です。また、病欠者など長期欠勤者も含まれます。
労使協定は、締結した後に労働基準監督署に届け出ることた必要なものがあります。以下は、届け出義務がある労使協定です。
①強制貯蓄
②1カ月単位の変形労働時間制
③1年単位の変形労働時間制
④1週間単位の非定型変形労働時間制
⑤時間外・休日労働に関する協定届(36協定届)
⑥事業場外労働
⑦専門業務型裁量労働制
⑧企画業務型裁量労働制
以上の内、⑦の時間外・休日労働に関する協定届(36協定届)は、労働基準監督署に届け出ることによって効力が生じます。36協定届は、雇用管理上非常に重要な労使協定です。別記事で詳細を説明します。
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労使協定とは、について、沖縄県那覇市の社会保険労務士、仲宗根隼人が解説しました。労務管理に関するご相談は、アクティア総合事務所にお気軽にお問い合わせください。