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  • 執筆者の写真隼人 仲宗根

健康保険⑨ 随時改定

 標準報酬月額が決定すると、残業手当や各種手当など毎月の支給額に変動があったとしても、原則として保険料は変動しません。但し、被保険者が受ける報酬額に著しい変動があり、かつ、それが継続すると認められる場合には標準報酬月額を随時に改定することとされています。注意を要するのは、任意に改定するものではなく、要件に該当した場合で保険者が必要であると認めたときはは改定されることです。労働者からすると、保険料の負担は小さい方がありがたいものですが、随時改定の要件に該当する程度に報酬額が変動している場合には、手続きを行う義務が生じます。


 随時改定の要件は以下の通りです。

①昇給や降給など、固定的賃金の変動があったこと

②継続した3か月間に受けた報酬の総額を3で除した額の等級と、現在の等級との間に2等級以上の差が生じたこと

③3か月とも、報酬支払い基礎日数が17日(1週間の所定労働時間がフルタイム社員の4分の3未満である短時間労働者又は1ヵ月の所定労働日数がフルタイム社員の4分の3未満の短時間労働者は11日)以上であること


 以上のいずれにも該当している場合、随時改定が行われます。誤りが生じやすい点が、基本給などの固定的賃金の額に2等級以上の差がなくても、残業手当などの非固定的賃金も含めて2等級以上の差が生じると、随時改定の要件に該当することです。

 例えば、基本給が1,000円だけ昇給、たまたま繁忙期に該当し残業手当が多く発生し、総支給額が高くなっている場合です。昇給月(実際に支給した月)から3か月平均した結果、現在の等級から2等級以上の差が生じており、各月とも17日以上勤務していると随時改定を行う必要があります。

 固定的賃金とは、基本給だけに限りません。通勤手当などの毎月支払われている手当が100円だけ昇給したとしても、3か月平均をとって2等級以上の変動がないか確認する必要があります。

 随時改定が適切に行われていない状態で、年金事務所の調査等で明らかになると、全て過去に遡って手続きを行う旨の指示がなされます。保険料も遡及して徴収(最長過去2年分)されることになり、労働者負担分も事業主が納付する義務があります。労働者負担分は、対象者から徴収することも法的には適正な処理ですが、長期間に及んだり退職していたりすると、現実的には徴収することは非常に困難です。残業手当や歩合給などの変動が激しい事業では、差額が大きくなることもありえます。給与計算を行う際、毎月の支給額だけではなく、随時改定にも注意する必要があります。

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