病気や負傷の療養など、人が生活を送るうえで医療を受ける必要が生じることがありえます。多額の医療費を全て自己で賄うことは難しいことが一般的です。このような出費に備え、会社員や自営業者が保険料を出し合い、同時に事業主も負担して、いざというときにこれらの保険料を原資として給付を行い、生活の安定を図る目的で作られたのが社会保険です。
狭義の社会保険には、医療保険と年金保険に区別されます。さらに医療保険は、会社員が加入する健康保険、船員保険、共済保険があります。自営業者は、国民健康保険に加入します。一方年金保険は、会社員が加入する厚生年金保険、全国民が対象になる国民年金があります。
大ざっぱに言うと、会社員になると、医療を受診するための保険、将来の年金を受給するための年金を同時に加入することになります。制度上は二つの保険に加入することになりますが、一部例外を除いて手続きは一回で済みます。なお、75歳以上の後期高齢者は、健康保険制度や国民健康保険制度からではなく、独立した医療制度である後期高齢者医療から医療給付を受けます。
労務管理の実務上、社会保険の取得や喪失、給付の手続きは、労働者やその家族の生活に直結する重要な手続きです。被保険者の対象者、扶養者の要件、負傷や出産などで休業した場合の給付、年金受給者の取り扱いなど、社会保険の手続きは非常に複雑になります。基本的に、事業所からの申告によって保険料の決定や給付の手続きがなされますので、社保に加入すると自動的に国や保険者から給付がなされるものではありません。近年はオンライン化が進み、様々な手続きがウェブ上で行えるようになりました。とはいえ、提出先が窓口からウェブへ、紙から電子データへと申請の手段が便利に変わっただけで、法令や基準そのものが変わった訳ではありません。誤った申請をすれば誤った結果になります。
AI時代の到来はもう目の前で、あらゆる公的申請手続きがスマホを通して、片手と指先で完結する時代になるのでしょう。しかし、出産といった人生の一大イベントや、負傷などのアクシデントに直面したとき、社員をサポートしてきた経験豊富な人や、法令に精通した人が寄り添うことは、いつの時代でも求められるのではないでしょうか。
社会保険関係法令は、特に改正が多い法令です。医療保険や年金財政は逼迫しているうえ、少子高齢化が急速に進み、我々国民に非常に大きな喫緊の課題となってのしかかっています。被保険者の対象はどんどん広がり、適用事業所も拡大しています。事業主や人事担当者は、社会保険関係法令の基本を理解すると同時に、最新の法改正にも注視しておかなければなりません。
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健康保険法上の健康保険とは。沖縄県那覇市の社会保険労務士、仲宗根隼人が解説しました。健康保険について、アクティア総合事務所にお気軽にご相談ください。
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